特集投稿原稿募集について

『平和研究』第66号 (2026年6月刊行予定)

特集テーマ:「ヒトならざるものから考える平和」

  

企画趣旨

 ウクライナとガザと続く危機を前に、暴力の行使は食い止められるどころか、むしろ泥沼にはまっている。ドローンやSNSは、そしてAIなどの様々な新たなテクノロジーはしばしば戦争を先鋭化させるために利用されてきた。21世紀も四半世紀を過ぎようとする現代にあって、近代国家の中に挿入された最良の獲得物であるはずの「人権」も公然と蹂躙される事例が増えており、風前の灯となりつつある。  

 「人類の進歩」と近年の惨状を重ね合わせつつ考えていくと、こうした状況は、特定のアイデンティティ(地域・民族・人種・宗教・ジェンダー・セクシュアリティなど)をもつ(1)「ヒト(humans)」を序列の最上位に置き、異なる個性を持つ人々を(2)「自分たちより劣るヒト(sub-humans)」や、(3)「ヒトならざる生きもの(in-humans)」とさえ位置づけ、その末席に動植物や天然資源などの(4)「モノ(things)」を置く、そのような「いのちの序列化」が暗黙の了解事項となっている。あるいは、天然資源の商品価値が高い場合は「モノ」の下位に(2)や(3)が来る場合があったり、自律型AIが明らかにヒトよりも高いパフォーマンスを示す現実もすでに定着しつつあり、それらは「いのちの序列化」のヴァリエーションとして理解できよう。

 本特集では、(1)「ヒト」の下位に措定されてきた諸存在((2)(3)(4))に光を当てようとしている。それは(1)「ヒト」にとっての「大切なもの」のために、それ以外の存在を蔑ろにしてきた状態を、「平和ならざる状態」として理解し、「ヒトならざるもの(non-humans)」の問題系として捉えることを意味している。

 資本主義の進展に伴う格差・不平等の止まるところを知らない拡大が顕在化した後に、近年、新型ウィルスの登場や、「自然災害」の激甚化を引き起こす気候の登場といった、「ヒトならざるもの」から人類に対する大いなるブローバックが続いてきた。そこには、第一に、「ヒト」が「自分たちよりも劣るヒト」「ヒトならざる生きもの」を「モノ」のように扱うという問題系、第二に「ヒト」が「モノ」を文字通り道具として使い倒してきたという問題系、第三に「ヒト」がその力を過信したことに対して「モノ」が逆襲するかのように応答してくるという問題系、そしてこれらが複雑に絡み合っている状況があると言える。これは、これまでの人類間の戦争が継続する中で、もう一つの「戦争」とも言える人類による「大地への戦争」とそれへの応答という問題が顕在化してきた状況と言い換えることができる。

 平和学には、こうした重層化した「平和ならざる状態」を理解できるよう言語化し、平和を再創造するための糸口を示すことが期待されている。本特集号は、これらの諸論点について考察する機会としたい。

第66号ゲストエディター

 

1 投稿資格

投稿資格を有するのは、平和学会の会員、もしくは投稿申込以前に入会申込書が平和学会事務局に受理されている方です。なお会員に広く執筆機会を提供するために、投稿を希望する号より前の3号に原稿が掲載されている会員については、投稿資格は認められません。

 

2 原稿の種類

投稿原稿の種類には、平和研究に関する研究論文、研究ノート、書評論文の3種類があります。詳細については執筆要領をご確認ください。応募された投稿原稿が多数となった場合には、研究論文の掲載を研究ノート、書評論文より優先することがあります。また研究論文として投稿された場合であっても、査読の結果、研究ノートとして掲載を認める場合があります。なお、投稿原稿は未発表のものでなければならず、同一の原稿を学会誌以外に同時に投稿することはできません。平和学会の研究大会・集会時に提出をしたフルペーパーは、未発表原稿として扱います。

 

3 投稿申込締切と投稿原稿提出締切

投稿申込締切は2025年6月30日、投稿原稿提出締切は2025年8月31日です。

 

4 投稿申込

原稿を投稿する2ヶ月前までに、投稿原稿の要旨と執筆者情報を所定の書式(書式1書式2)で提出してください。

 

5 原稿の投稿

投稿に際しては、刊行・編集規程投稿規程執筆要領を確認のうえ、これらの規定に則って原稿の執筆と投稿を行ってください。これらの規定に定められた要件を満たしていない原稿は、受け付けることができませんのでご注意ください。

 

6 投稿申込・原稿送付の連絡先

メールで下記のアドレス宛にご連絡ください。

psaj26journal(a)gmail.com  ((a)は@におきかえてください)

第26期編集委員会 下谷内奈緒宛

メール送信後1週間以内に受信確認の返信がない場合には、再度ご連絡ください。

 

7 査読結果の通知

原則として投稿後3カ月以内に査読結果を通知します。

 

8 オンライン・ジャーナルへの掲載

完成した原稿からオンライン上で逐次刊行となります(完成原稿から先行公開されます)。 原則として掲載可となった原稿は、投稿から1年以内の刊行を予定しています。