2022年 秋季研究集会プログラム

 

大会テーマ「揺れ動く世界の歪みを東アジアから凝視する

 

 2022年 11月26日(土)・27日(日)

会場:愛知大学 (名古屋キャンパス)

*すべての部会はハイブリッド方式に行います


 

 

(フルペーパーは大会終了後、1~2週間ほど掲載されます)

愛知大学の学生が作成したQRコードがついた「平和するあいちマップ」です。クリックするとダウンロードできます。



 開催趣旨

 

「世界の工場」として急成長した中国は、2008年のグローバル金融危機からいち早く回復し、2010年にはGDP世界第二位に躍りでた。その後、一帯一路政策に代表されるように、周辺国を中心に、アフリカ諸国や太平洋諸国にも積極的に外交や経済援助を展開し、アメリカの覇権に挑戦する大国となった。これに対して冷戦後加速化するグローバル市場での既得権に脅威を感じた欧米、とりわけアメリカは、中国に対する経済強硬論を強め、米中の貿易摩擦が激化した。その後も、2020年の新型コロナウイルス感染拡大の責任論や新彊ウイグル自治区における人権が侵害される状況、さらには香港に対する国家安全法の適用をめぐり、アメリカは中国政府に対する批判の声を高めていった。

 2022年2月に始まったロシアのウクライナに対する「特別軍事作戦」に対し、中国が間に立てば、アメリカをはじめとする西側諸国との関係を改善する可能性があったかもしれない。しかし実際には、欧米などがロシアに対する経済制裁を強化する中で、中国はロシアからの原油の輸入を増やし、ロシアを間接的に支援するなど、戦争を助長させる動きを見せている。その結果、米中の相互不信はいっそう高まり、それは東アジアの平和を揺るがす「飛び火」にもなりつつある。実際に、アメリカのインド太平洋軍の前司令官フィリップ・デービッドソンは、台湾をめぐる危機が2027年までに起きる可能性があると発言した。これは東アジアで暮らす私たちの平和を直接的にも構造的にも脅かし、超大国の軍拡覇権ゲームに巻き込まれることを意味する。

 そこで、本集会は「揺れ動く世界の歪みを東アジアから凝視する」というテーマのもとに、東アジアをめぐる『平和と安全』に焦点を合わせ、私たちが暮らすこの地域の平和の妨げになっているものを明確に描かなければならない。足元から日本の憲法、沖縄、核の問題、そして米中対立の中で変容するグローバルサプライチェーンを担う多国籍企業の在り方などを取り上げて、平和を脅かすもの・平和の実現に有効なものを多角的に検討し、積極的平和の実現をみなさんとともに考える時間としたい。

                                       第25期企画委員長 アレキサンダー・ロニー

                                   第25期企画副委員長 堀 芳枝  

 

 

プログラム 

 

11月26日(土)

9:00-11:00 部会1(「気候変動と21世紀の平和」プロジェクト委員会企画)

SDGs時代の「環境正義と平和」再考―多国籍企業の「自主的取り組み」の検討から

会場:L307

 

 コーヒー、バナナ、パーム油、紙(パルプ)などのグローバル商品を扱う企業のなかには、その生産過程で環境破壊や人権侵害を引き起こしてきたものが少なくない。市民社会は1980年代からこれらの問題に対して批判の声をあげ、企業への監視の目を厳しくしてきた。これを受け、多くの企業が1990年代以降、持続可能性や企業の社会的責任(CSR)を謳った自主的取り組みを進めてきた。この動きは持続可能な開発目標(SDGs)達成への動きとも相まって、近年加速している。では、こうした取り組みが進められることによって環境や人権をめぐる問題は解決にむかうのだろうか。グローバル商品の生産現場では、それが必ずしも操業実態の改善につながらないばかりか、暴力が覆い隠される場合もあるのではないか。本部会ではこのような問題について議論し、SDGs時代の環境正義と平和について考えたい。

 

報告:戸田清(長崎大学名誉教授)「環境正義と平和――背景としての資本主義[石油]文明」

報告:笹岡正俊(北海道大学)「紙の「責任ある生産」のための企業の取り組みは何をもたらしたか:自主規制ガバナンスの進展がもたらす被害の不可視化」

報告:関根佳恵(愛知学院大学)※非会員「多国籍アグリビジネスによる『オルタナティブの盗用』—新たな規制枠組み構築の可能性と課題」

討論:横山正樹(フェリス女学院大学名誉教授) 

討論:勝俣 誠(明治学院大学国際平和研究所PRIME)

司会:鴫原 敦子(東北大学) 

 

9:00-11:00 部会2(自由論題)

会場:L407

報告:Susmita Bastola(大阪女学院大学大学院) “Dynamics of Political Violence and Enforced Disappearances from the Tharu Communities of Nepal”

討論:菊池真理(筑波大学非常勤講師)※会員に申請中

報告:小林晴美(国際基督教大学大学院)「越境するジャガイモ農業交流 :トランスナショナル協力と朝鮮半島の人間安保と平和」

討論:金敬黙(早稲田大学)

報告:中沢知史(立命館大学 言語教育センター)「インディオのいない国」ウルグアイにおける新しい人権課題としての先住民―セトラー・コロニアリズム論からの示唆―」

討論:上村英明(恵泉女学園大学名誉教授)

司会:堀芳枝(早稲田大学)

 

11:00-12:00 昼休み

会場:L305

 

12:00-14:00 分科会

 

14:10-15:20 総会

会場:L307

 

15:30-17:30 部会3 第8回平和賞記念部会企画(「憲法と平和」分科会、憲法プロジェクト委員会共催)

「平和国家」日本を根源的に問い直す

会場:L407

 

この部会は第8回平和賞を受賞した古関彰一氏と豊下楢彦氏を報告者として迎えて、彼らの最新の問題意識、研究関心に基づく報告と、平和賞受賞の主たる対象となった両氏の共著『沖縄 憲法なき戦後』を沖縄出身の小松寛会員が読解する報告で構成される。「平和国家」と表現される戦後日本国家の内奥にある「安保国体」を抉り出した両氏が、いま日本の平和研究者にどのようなメッセージを発するのか。米中の狭間で翻弄される東アジアの我々は、沖縄とともにどのように平和への活路を切り拓くのか、ともに考えたい。

 

報告:豊下楢彦(元関西学院大学)「ウクライナ戦争と東アジア平和の条件――軍縮の必然性」

報告:古関彰一(元獨協大学)「日米安保体制と指揮権」

報告:小松寛(成蹊大学)「沖縄から戦後日本国家を見る――沖縄から古関・豊下『沖縄 憲法なき戦後』を読む」

討論:青井未帆(学習院大学)

司会:君島東彦(立命館大学)

 

 

11月27日(日)

9:00-11:00 部会4(「3・11」プロジェクト委員会企画)

核廃棄物問題への平和学の視角―脱原子力社会を見据えて

会場:L307

 

 原子力規制委員会は2022年7月、東電福島第一原発に溜まる汚染処理水の海洋放出計画を正式認可した。この間、地元漁協をはじめ多くの反対の声とともに海洋放出をめぐる議論が展開されてきているが、平和学の観点からは、この問題をどう捉え考えていく必要があるだろうか。
 原発が生み出す核廃棄物問題は、常に扱いの難しいテーマである。なぜなら、何をもって「解決」とするのか、あるいはそもそも「解決」など可能なのか、その解決困難さゆえに脱原子力社会を指向する運動内部にすら、ときに分断をもちこむテーマでもあるからだ。しかし3.11を真に教訓とするには、この問題にどう向き合っていくのか、将来世代の平和への責任のもとに考え続けていく必要があろう。3.11が生み出した長期的課題を踏まえ、脱原子力社会への道筋を描くとき、そこにどのような課題があるのか。参加者とともに考えていく契機としたい。

報告:竹峰誠一郎(明星大学)「福島第一原発の汚染処理水の海洋放出—太平洋諸島からの眼差し」
報告:徳永恵美香(大阪大学)「 福島第一原発事故に伴う核廃棄物処理と人権−国際法的視座から見た日本の課題−」
報告:鈴木真奈美(明星大学)「台湾における脱原子力の運動と政治――3・11後を中心に」
討論:小野一(工学院大学)
司会:平井朗(ノーモア・ヒバクシャ記憶遺産を継承する会)

 

9:00-11:00 部会5(開催校企画)

ラウンドテーブル:東アジアをめぐる「平和と安全」の条件

*本部会は愛知大学国際問題研究所との共催です。

会場:L407

 

 米中対立が常態化する中で、軍事衝突を前提とした「今日のウクライナは明日の台湾」といった危機感が高まる。同時に、北朝鮮による核兵器開発も進んでおり、東アジアの各地で「新冷戦」や「冷戦2.0」が現実味を増しつつある。他方で、東アジアの安全保障論では、人間が生きる現場が往々にして後景におかれる。自省を込めていえば、「生」の現場に光を当ててきた平和研究が、その声を寄せ集めることに終始してしまってはいないだろうか。この部会では、「東アジアをめぐる平和と安全」を実現するための条件やその方策などについて、多角的視点から考えたい。なお、個人、社会、そして国家とグローバルの諸レベルを、さらに東アジアと地球大の動態をつなぐ意図から、「東アジアをめぐる…」とした。

 

パネリスト:佐々木寛(新潟国際情報大学)

パネリスト:金敬黙(早稲田大学)

パネリスト:森本麻衣子(青山学院大学)

パネリスト:佐藤元彦(愛知大学)*非会員

司会:加治宏基(愛知大学)

 

11:00-12:00 昼休み

会場:L305

 

12:00-14:00 分科会