2010年 秋季研究集会プログラム

集会テーマ「非暴力と脱「開発」による永続可能な社会への変革」 

 

2010年 11 月 6 日(土)7 日(日)

場所:茨城大学水戸キャンパス

 

開催趣旨

 

 現在の我々は「歴史的変化」と呼ばれる事象には事欠かない。オバマ政権の誕生、民主党政権の誕生による政権交代への期待は一進一退の様相を呈し、各国で政権交代や新しい動きがみられるが、大きな政治的変化のうねりには未だつながらない。核兵器廃絶に向けた動きなど、なかには平和に向けた着実な一歩として高く評価すべきものもあるが、多くは既存の“暴力に依存した政治、開発に偏重した経済、永続不可能な社会”がその装いを変えて継続していると考え得るものである。

 このような世界をどうやって変えていくのかについて、これまで様々な議論が重ねられてきた。そこで本研究集会では、政治的には非暴力、経済的には脱「開発」あるいは脱成長、社会的には永続可能性(サステイナビリティ)をキーワードに、新たな社会への変革について、茨城大学の気候変動科学の研究機関との共催により、これまで平和学会が必ずしも得意としなかった面からの議論も織り込みながら、根本的な部分から展開を試みたい。

 

 

11月6日(土)

午後の部

 

13:00~15:00

分科会

  

15:10~16:00

総会

平和賞授与式

受賞団体:長崎の証言の会 

 

16:10~18:40

部会 I

開催校企画1

平和とサステイナビリティのための政治・経済・社会

 

サステイナブル(永続可能)であるためには、人びとの平和は必須の条件である。しかし、現在議論されているサステイナビリティ学においては、必ずしも平和問題は中心的課題とはならず、もっぱら温室効果ガス排出削減のための環境技術、それらの発達と普及を促す経済政策、それを実現する政治プロセスの議論がその中心を占めてきた。そこには、これらの技術や政策が成功すれば、自ずとサステイナブルな平和や社会が手に入るはず、という前提があったのではないだろうか。では、温暖化研究が思い描く永続可能な社会の姿とはどのようなもので、現在我々はその途上、どのあたりにいるのか。そして、行き着く先に待っている社会を、平和学はどのようにとらえ、どのような提言を行っていくのか。気候変動の研究者と平和学研究者との貴重な対話の場をここでつくりたい。

 

報告:三村信男(茨城大学、ICAS機関長)

「気候変動問題と持続可能なアジアの展望」

 

報告:西川潤(早稲田大学)

「ポスト経済成長時代の開発と平和」

 

討論:戸﨑純(首都大学東京)

討論者:中川光弘(茨城大学、ICAS)

司会:安部竜一郎(立教大学)

 

部会 II

「長崎の証言の会」平和賞受賞記念部会

原爆被害者の証言に光をあてて

 

企画担当:「グローバルヒバクシャ」分科会

 

報告:濱崎均(長崎の証言の会・代表委員)

「今、語り継ぎたい長崎の被爆証言運動」

 

報告:中村尚樹(フリー・ジャーナリスト)

「『被爆者の心』と『こころのヒバクシャ』」

 

報告:桐谷多恵子(広島市立大学・広島平和研究所)

「原爆被害者の証言に光をあてて」

 

コメント:山根和代(高知大学)

司会兼コメンテーター:石川捷治(久留米大学)

 

19:00~

懇親会

 

11月7日 (日)

9:30~12:00

 

午前の部

部会III

開催校企画2

非暴力と脱『開発』

 

本部会では、強制力をその背景におく今の政治における非暴力と、経済成長を必須とする今の経済における脱「開発」がどのように関係するのかについて議論を試みる。利潤を優先した「開発」は、その国家全体としてみた経済成長の影で、多くの人びとの生命の営みを阻害しただけでなく、彼らの異議申し立てを封じるための「国家安全保障」と称する諸政策と、それらの道具としての近代的な軍隊や治安機構を支える基礎となってきた。この暴力の社会構造に暴力で対抗することは、たとえそれが成功しても、別の富国強兵国家をつくるだけであったのは、我々の苦い歴史的経験が証明している。非暴力抵抗運動もまた、インドにおいて後に強大な暴力である核兵器の配備を止められなかった。そこには、「開発」を相対化する視点が十分に残されなかったのではないだろうか。我々は、非暴力と脱「開発」をどのように両立させることができるのか?容易に答えのでないこの難題について、本部会で議論を始めたい。

 

報告:ダグラス・ラミス(沖縄国際大学)

「開発と暴力」

 

報告:辻信一(明治学院大学、環境運動家)

「エコとピースの交差点―脱成長とスローライフ―」

 

討論:石井一也(香川大学)

討論:中野佳裕(立命館大学)

司会:平井朗(立教大学)

 

自由論題部会

報告:古内洋平 (一橋大学)

「被害者におけるトランスナショナル化とプライベート化―アパルトヘイト被害者運動を事例に―」

 

報告:竹峰誠一郎(三重大学)

「『視えない』核被害:可視化するアプローチを求めて」

 

報告:島崎裕子(早稲田大学)

「日本における人身取引被害者の多様化―支援状況と取り組みへの課題―」

 

討論:長有紀枝(立教大学)

ロニー・アレキサンダー(神戸大学)

司会:土佐弘之(神戸大学)

 

12:30~14:30

分科会

 

14:40~17:10

午後の部

部会 IV 

人民の自己決定権と沖縄―自治・独立・平和の実現を目指して(仮)

企画担当:「琉球・沖縄・島嶼国及び地域の平和」分科会

 

パネラー:

上村英明(恵泉女学園大学・市民外交センター代表)

佐藤幸男(富山大学)

島袋純(琉球大学)

松島泰勝(龍谷大学・ゆいまーる琉球の自治代表)

 

コメンテーター:金子マーティン(日本女子大学教員・反差別国際運動事務局次長)

 

司会:竹尾茂樹(明治学院大学国際平和研究所)

 

部会 V

対テロ世界戦争と悪化する人権状況

企画担当:「平和運動」分科会

 

パネラー:

北沢洋子(アジア太平洋資料センター)

天木直人(元レバノン大使・外交官)

成澤宗男 (『週刊金曜日』企画委員)

伊藤和子(ヒューマン・ライツ・ナウ)

 

司会・コーディネーター:木村朗(鹿児島大学)