大会テーマ「東アジアにおける「民衆の平和」を求めて-日韓歴史経験の交差」
2007 年 11 月 9 日(金)~ 11 日(日)
場所:韓国済州大学校
開催趣旨
東アジアにおいて経済協力は急速に展開しているものの、日本外交は未だ対米依存に安住し、それによる孤立が際立ち、地域の平和・安全保障協力に多くの難問を投げかけている。2007年2月の6者協議合意は、東アジアの平和・和解の方向に一定の明るい展望を開くものであったが、核拡散や軍拡の不安、エネルギー・ナショナリズム、過去の清算をめぐる問題など、未だ無数の障害が山積している。そしてこれら障害の最も根底に横たわるのは、依然として、無数の流血と犠牲の上に築かれてきた東アジアの近現代史と、その歴史認識をめぐる諸問題に他ならない。
秋季研究集会では、今後の東アジアにおける「民衆の平和」を模索するべく、歴史の影、すなわち<周辺>の視点から再度、日韓の同時代史を捉えなおしてみたい。開催地の韓国済州道は、1948年、島の人口の9分の1が殺害される「4・3事件」のトラウマに苦しんできたが、1999年の「4・3特別法」の制定、真相調査報告書の刊行、国家暴力についての大統領の公式謝罪、4・3平和公園の造成など、過去の清算が大きく進展した。
済州では、「4・3事件」の教訓から、かねてより非暴力、和合の必要性が叫ばれてきたが、近年韓国政府によって公式に「平和の島」として位置づけられ、2006年より韓国初の「特別自治道」となるなど、独自のアイデンティティを築きつつある。東北アジアの中心に位置し、沖縄とも比されるような苦難の歴史を経てきたこの島は、東アジア近現代史の矛盾とその新しい展望を考える上でもきわめて重要な土地である。
韓国における諸団体の協力を得ての学会開催は、日本平和学会にとって初めての試みとなるが、民衆中心の東アジア平和構築のために、学会がささやかにでも貢献しうる貴重な契機ともなるだろう。
11月9日(金)
15:30~18:30
午後の部
部会Ⅰ
「東アジアの国家システムと国家暴力の経験」
司会:高豪晟(済州大学)
報告:鳥山敦(琉球大学)
「沖縄における国家テロリズム」
報告:朴贊植(4・3研究所)
「抗争と隠蔽の4・3の歴史;遺骸発掘現場報告」
報告:申鎮旭(韓国中央大学)
「韓国の軍事主義的国家形成と国家テロ」
討論:内海愛子(大阪経済法科大学アジア太平洋研究センター)
討論:張元碩(済州大学校)
平和連帯特別セッション
「米日軍事同盟が東アジア平和に及ぼす影響」
司会:石川捷治(九州大学)
報告:姜禎求(東国大学)
「米国の東アジア戦略の変化と日本の再武装化をどう見るのか」
報告:李章熙(慶熙大学)
「米日軍事同盟強化が東アジア民衆に及ぼす影響」
討論:金勝子(平和統一市民連帯)
討論:朴ヘジョン(インターネットメディア・チャンマルロ)
討論:李チョルギ(東国大学)
討論:舟越耿一(長崎大学)
19:00~
レセプション
11月10日(土)
9:00~11:30
午前の部
部会Ⅱ
「東アジアにおける民衆の安全と平和―米軍基地問題を中心に」
司会:宮脇昇(立命館大学)
報告:亀山統一(琉球大学)
「日米同盟の変革」と沖縄・日本の基地問題」
報告:李圭倍(耽羅大学)
「韓州海軍軍事基地反対運動と東アジアの平和」
報告:朴淳成(東国大学校)
「駐韓米軍と朝鮮半島の平和」
討論:木村朗(鹿児島大学)
討論:高ビョンス神父(済州島)
自由論題部会
司会:庄司真理子(敬愛大学)
報告:岡野内正(法政大学)
「植民地化不正義審判プロセスを通じての平和構築 -ニュージーランドの事例の日本・アジアへの適用の可能性-」
報告:中村都(追手門学院大学)
「アジア太平洋戦争をめぐる歴史認識 シンガポールと日本の教科書の比較を中心に」
報告:竹峰誠一郎(早稲田大学大学院)
「グローバルヒバクシャの射程-「NGO被爆問題シンポジウム」から30年によせて」
報告:大西知子(小学校教諭)
「高齢化する広島のコリアンたち-今、なお現役として生きる-」
討論:村井吉敬(上智大学)
討論:金鳳珍(北九州市立大学)
特別部会
「国籍条項について」
司会:中村尚司(龍谷大学)
報告:田中宏(龍谷大学)
「戦後日本における国籍問題」
報告:ロニー・アレキサンダー(神戸大学)
「日本学術会議問題 ~生活の中から見た官僚大国日本」
報告:鄭印燮(ソウル大学校)
「韓国における国籍問題」
討論:岡本三夫(広島修道大学)
討論:佐竹眞明(名古屋学院大学)
11:40~13:10
分科会(昼食兼ねる)
11:40~13:10
韓国NGOとの懇談会(日韓平和運動の課題)
13:10~14:00
総会
14:00~16:30
午後の部
部会 Ⅲ
「済州からみる東北アジアの平和」
司会:遠藤誠治(成蹊大学)
報告:徐東晩(尚知大学校)
「済州、沖縄、台湾の安全保障」
報告:崔元植(仁荷大学校)
「天の息子、地の子供たち」
討論:金ジノ(済州大学校平和研究所)
討論:徐勝(立命館大学)
16:50~18:50
午後の部
部会Ⅳ
「4・3と芸術」
司会:
李静和(成蹊大学)
徐勝(立命館大学)
発話者:
金石範(作家)
玄基栄(作家)
山口泉(作家)
洪性潭(画家)
19:00~
夕食
開催校企画
「済州平和マダン」
屋外で劇、詩の朗読、民衆歌謡などを鑑賞しながら、串刺し豚の丸焼きなど、済州島の民俗料理をバイキング形式で楽しむ。
※このほか、一般企画 学会開催中の全期間、4・3研究所などによるパネル展も予定。
11月11日(日)
フィールドワーク―島内、4・3事件関連史跡めぐり(自由参加)
A班:南部、旧日本軍軍事施設、4・3事件関連史跡めぐり→松岳「震天」基地、アルトゥル飛行場、百祖一孫の墓
B班:北部、4・3事件関連史跡めぐり→4・3平和公園、ソウル虐殺現場、朝天面北村小学校虐殺現場、抗日記念館
C班:済州最南端の小島「馬羅島」と東アジア平和祈願の寺「祇園精舎」、同寺で開催中の「平和のための民衆美術展」の観覧ツアー