第4回全国キャラバンを、北海道・東北地区研究会との共催により、下記の通り開催いたしました。ご参加くださった皆様、ありがとうございました。
学会事務局:黒田俊郎
共通テーマ「脱植民地化のための平和学とは――北海道/アイヌモシリで考える」
日時:2012年8月30日(木)13時~18時
会場:北海道大学文系6番教室(文系共同講義棟の1階奥)
プログラム
司会:片野淳彦(札幌大学)
挨拶:黒田俊郎(新潟県立大学)
基調講演
貝澤耕一(NPO法人ナショナルトラスト・チコロナイ)
「アイヌ民族の復権~植民地からの脱却に向けて」
報告1:
松名隆(室蘭工業大学)
「アイヌの真の文化享有権確立に向けて~アイヌ-シサムの連帯と脱植民地化」
報告2:
越田清和(ほっかいどうピーストレード)
「平和学と植民地責任―市民の科学としての平和学をめざして」
報告3:
上村英明(恵泉女学園大学)
「グローバル化と再強化される植民地主義-歴史に責任をもつ市民社会を構築できるか」
討論1:
小田博志(北海道大学)
討論2:
清末愛砂(室蘭工業大学)
総合討論
【企画趣旨】
「平和の再定義」を目指して開催している平和学会全国キャラバンを、8月に北海道で行います。今回は植民地主義と脱植民地化、そして先住民族の権利回復という、平和学において非常に重要なテーマを正面から論じます。アイヌ民族の立場から、国による二風谷ダム建設に反対し続けてきた貝澤耕一氏に基調講演をしていただき、貝澤氏と共に『アイヌ民族の復権―先住民族と築く新たな社会』(法律文化社2011年)を出版された松名隆氏(室蘭工業大学)に報告いただき ます。また、植民地としての北海道の視点から論文集『アイヌモシリと平和』(法律文化社2012年近刊)を編んだ越田清和会員、『先住民族の「近代史」―植民地主義を超えるために』(平凡社2001年)の著者上村英明会員が報告いたします。
翌8月31日には二風谷スタディー・ツアーを実施しました。
それも含めた詳しいプログラムは下記のPDFをご覧ください。
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二風谷スタディー・ツアー
第4回全国キャラバン報告
2012年8月30日、日本平和学会の第4回全国キャラバンが北海道大学(札幌市)を会場に開催された。記録的な残暑にも関わらず、道内外から40名余りの出席者が得られたことを喜びたい。今回は「脱植民地化のための平和学とは:北海道/アイヌモシリで考える」と題し、先住民族と植民地主義を切り口として、北海道で平和を考えることの意味を再検討する機会となった。
貝澤耕一氏(NPO法人ナショナルトラスト・チコロナイ)の基調講演は、アイヌ民族の立場から二風谷ダム建設に反対し、開発の名のもとに失われたイウォル(生活資源確保の場)の再生に取り組む活動を通じて、植民地支配への悲しみと怒りを静かに強く訴えるものだった。続くシンポジウムでは、松名隆氏(室蘭工業大学)が基層文化論の観点から精神文化面に偏重しがちなアイヌ文化振興に警鐘を鳴らし、越田清和会員(ほっかいどうピーストレード)が北海道での平和研究において、アイヌ民族をめぐる問題が植民地主義という文脈から十分に捉えられてこなかったことを明らかにし、上村英明会員(恵泉女学園大学・市民外交センター)が先住民族をめぐる問題を無意識で未解決の植民地支配と捉えて、その法的・歴史的・政策的な検討を行った。
清末愛砂会員(室蘭工業大学)と小田博志会員(北海道大学)による討論では、脱植民地化を指向する上での大学や研究者・平和研究・市民社会が抱えるべき課題やジェンダーの視点を取り入れることの重要性が指摘された。総合討論では脱植民地化への具体的動きや解決への道筋および問題点、紛争解決への研究者の関与のあり方、「脱植民地化」という用語をめぐる問題などが取り上げられた。
5時間にわたる長丁場であったが、参加者の多くが熱心に報告に耳を傾け、知的刺激に満ちた会となった。翌31日には苫小牧東部開発地域と二風谷ダム、チコロナイの森を視察するエクスカーションも行われた。この問題についてはキャラバンでの講演・報告に加えて、貝澤・松名ほか編著『アイヌ民族の復権:先住民族と築く新たな社会』(法律文化社、2011年)および越田編『アイヌモシリと平和:〈北海道〉を平和学する!』(法律文化社、2012年)という関連書籍も刊行されている。これらを手がかりとして、今後も地区研究会で取り上げていきたいと考えている。 (地区研究会代表者 片野淳彦)
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松名報告レジュメ
越田報告ペーパー
上村報告レジュメ
小田討論レジュメ
清末討論レジュメ
片野司会レポート