大会テーマ「コロナ危機に立ち向かう」
2020 年 5 月 30 日(土)・31 日(日)
オンライン開催
開催趣旨
新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大は世界規模で急速に進み、世界保健機関(WHO)が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言して、この5 月末で4 カ月が経過する。新型コロナウィルスによって、これまでに 25 万人を超える人びとの命が奪われただけではない。高額な医療費を負担できずに治療を受けられない感染者、明らかな補償のないまま休業を要請された中小企業、突然の解雇を告げられたそれら中小企業の従業員、過重な労働を求められる医療関係者、治療や支援策にアクセスすることのできない人びと、ネットカフェという居場所を失った人びと、虐待やDV から逃れられなくなった人びと、世界各地で攻撃されるアジア系の人びと、個人情報が公開されたりコミュニティから排除されたりする感染者......連日、新型コロナウィルスによって、その暮らしを脅かされたり、暴力にさらされたりしている人びとの存在が伝えられている。このような事態は、新たに発生したわけではない。すでに存在した問題が、新型コロナウィルスによって、より顕在化したといえるだろう。
人びとの命と権利を守り、社会の崩壊や経済的困窮の広がりを防ぐことは、わたしたち共通の緊急課題である。また、さまざまな学問領域の研究者から成り、また研究だけでなく種々の市民活動に携わる会員も少なくない日本平和学会だからこそ、「第二次世界大戦以降で最も困難な危機」と国連事務総長が呼ぶこの非常事態のなかで、人間の尊厳を基本的な価値として平和を探求するための議論を発信していくことができるはずである。以上のような
認識から、平和フォーラムと連動した緊急企画部会として、「コロナ危機に立ち向かう」を立ち上げることとなった。登壇者各位には非常に限られた時間のなかでご準備いただいたことに、深く感謝申し上げたい。オンラインでの研究大会は日本平和学会初の試みであり、さまざまな不手際についてはご寛恕いただきたい。
なお、第23 期企画委員会は、21 世紀から20 年が経った現在でも、世界のいたるところで起きている暴力に対し、平和研究(者)がどのようにこたえるのか議論する場を提供することを責務と考え、この2年間の研究大会・集会での企画を立ててきた。「市民社会スペース」の狭隘化や抑圧が進行する状況(2018 年度秋季研究集会部会3)において、わたしたちは、どう分断を乗り越えていけるのか。人と人が再びつながるために必要な、知的な営みと
しての「想像力」について議論した(2019 年度春季研究大会部会 5)。2020 年度春季研究大会では、人間がほかの生命の支配・搾取・破壊のうえに、その豊かさを築いてきた(2019 年度秋季研究集会部会 3)という認識のもと、現代を生きるわたしたちが、次の世代にどのような社会を引き継いでいけるのか、現在進行中のさまざまな暴力に対する「未来のための抵抗」を大会テーマとする部会を準備してきた。予定されていた部会については、今後の研究大会・集会での実現をめざし、第24期企画委員会に引き継がせていただきたい。
第23 期企画委員長 佐伯奈津子
5 月 30 日(土)
10:00-12:00 分科会「軍縮・安全保障」 Zoom
安全保障概念を問い直す
報告:上野友也(岐阜大学)
「膨脹する安全保障̶̶̶ 終結後の国連安全保障理事会による人道的統治」
討論:草野大希(埼玉大学)
討論:クロス京子(京都産業大学)
司会:中村長史(東京大学)
13:00-15:00 分科会「公共性と平和」 Zoom
新型コロナ禍と公共理念
報告:宮脇昇(立命館大学)
「COVID-19 対策としての国境封鎖̶̶ 移動の自由と健康」
討論:ナンジン・ドルジスレン(モンゴル戦略問題研究所)
司会:玉井良尚(岡山理科大学)
15:30-17:30 分科会「アフリカ」 Zoom
アフリカにおける環境保全活動
報告:高橋郷(早稲田大学大学院・NPO 法人Little Bess International 代表)
「アフリカの都市スラムにおける環境保全活動の可能性と実証研究̶̶ コロゴッチョスラムの事例から」
討論:蓮井誠一郎(茨城大学)
司会:古澤嘉朗(広島市立大学)
5 月 31 日(日)
9:30-12:00 平和フォーラム連動緊急企画部会 Zoom
コロナ危機に立ち向かう
第一部 身の回りの暴力を見据える
報告:安藤歴(大阪大学大学院)
「学生の貧困を考える̶̶新型コロナウイルス感染拡大と非常事態宣言を受けて」
報告:近江美保(神奈川大学)
「新型コロナウィルスとジェンダーをめぐる問題」
報告:勅使川原香世子(ことぶき共同診療所)
「新型コロナ対策の現場で起こっていること̶̶ フィリピンと日本を中心に」
報告:安積遊歩
「コロナ禍の中に跋扈する優生思想を問う」
モデレーター:川崎哲(ピースボート)
第二部 コロナ危機と新たなグローバル社会
報告:米川正子(筑波学院大学)
「コロナ危機中も、なぜ紛争が止まらないのか」
報告:川崎哲(ピースボート)
「コロナ危機が変える「安全保障」概念」
報告:蓮井誠一郎(茨城大学)
「コロナウィルス禍から見た「環境問題」」
報告:竹中千春(立教大学)
「パンデミック後の民主主義と国際社会」
モデレーター:佐渡紀子(広島修道大学)
12:10-12:30 総会 Zoom